<< お買い物。 | main | ホワイトホリデー >>


#2011.04.25 Monday    スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | - |


#2010.11.12 Friday    ドルチェ・ブービートラップ(pumpkins)
 一日遅れてしまいましたが、ミステリアスポッキーデイ!
マジで内容がミステリアスになった^^^^






  物事とは過程の結果で構成されている。堅実に示す事実は、いつだって自分の味方だとミケーレは信じていた。来るべき結果は全て過程に則る。だからこそ、嫌いなものがある。
 それは不確定要素を多分に含んだ、運というもの。
「……面白くない」
 ぼそりと呟かれたカミーラの言葉に、思い切り乗りたい。いつも彼女は兄と意見が合うのに、今回だけは珍しく合った。
 面白くない、根本的に間違っている。
 紙面に記されたのは、平行と垂直の直線。三本引かれた線に、幾重にも悪戯に線が書き足してある。三本の線の先にはそれぞれ名前が記されてあった。ここにいる三人分の名前。
 下校してからの時間は、大抵オーメン家に集まるのが三人の習慣だった。ケープコッドよりこちらの方が近いという理由と、多忙なオーメン氏が不在の所為である。特に喧しいことをするわけではないが、何かと気にせずに行動出来る利点があった。子供というには歳が行き過ぎたが、自由に出来る三人の城を獲得した気分だった。ミケーレとしては余り近寄りたくない場所ではあったが、ハイスクールに入学してからというもの毎日のように強引に引き摺られるように連れて来られ、今に至る。実父と顔を合わせる気など更々ない。最初のうちは、いつ帰ってくるのかと玄関を気にしていたが、執務に奔走している実父は、家に帰ることすら稀なのだという事実がその内に判った。帰る際には電話が一本あるのは、兄の気遣いなのか、実父の気遣いなのか。そこに心地悪さは感じるものの、ミケーレは兄と幼馴染みに逆らえずに居る。
「いやあ、予想外だ」
 マークが困ったように笑っていた。思い切りその頬を引っ張ってやりたい衝動に駆られたが、そんなことよりももっと解決しなければならない問題がある。
「こうするのが伝統だって、聞いたんだけどな」
「マークの話からして、あみだくじにすること自体が間違ってる気がするが……」
「そうよ、何が面白くて顔が同じ男二人の光景見なくちゃならないの……」
「なんだ、カミーラ、俺としたかったのか?」
「――ちが! ばか、そうじゃなくて!」
「カミーラはいつから海の悪魔みたいな顔になったんだか。可愛いけどな」
「マーク!」
 水蜜桃色など可愛い色合いではない、正に真っ赤という、茹で上げられた蛸の顔色になったカミーラがぎゃあぎゃあと横で喚くので、左耳が痛い。もういつものことだ。さっさとどうにかなってしまえばいいと思う気持ちと、どうでもいいという気持ちと、もやりとした特定不能の感情がが鬩ぎ合って厄介だ。溜息という名の盛大な息を吐いて、ミケーレはマークの手元にある赤い箱を見遣る。
 細い棒状のクッキーに、チョコレートがコーティングされたお菓子の箱だ。内容だけならミケーレも多分好きな菓子の部類に入るだろうが(というか甘いものは大好きだ)、話を聞いていると食べるのを躊躇う。
「仕方ない、カミーラと同じくらい可愛い片割れと食べるしかないか」
「マーク……気色が悪い」
「何でだ? 普通の兄弟愛じゃないか」
「偶に思うんだけど、愛の節が強すぎやしないかしら……っていうかマーク、あなた甘いもの苦手じゃない」
「異国のものだから良いんだ」
「(訳が判らない……)」
 自分と殆ど同じ形をした指が器用にパッケージを開けていく。中には小分けにされた袋が二つ。そのうちの一つを手にとって、ビニールを破る。
 マークは顔が広い。そして何をするか、偶に双子のミケーレでもよく判らないことをする。今日だって、ふらりと二限目の授業を抜け出して、ふらりと五限目に帰ってきたと思ったら、何か企んだかのような顔をして自分達を見ていた。手には件の赤い箱。学校を抜け出して、どうやらロストリバーデルタの発掘現場で兄が慕う教授に会ってきたついでに、わざわざアラビアンコーストまで足を伸ばしたらしい。その先で手に入れたのが、この菓子だそうだ。何故知り合ったのかは知らないが、いつの間にか兄はあの地域に立つ城の王子と顔見知りになっていた。ミケーレも何度か会ったことがあった。彼の友人(会ったことはない)は良く遠方へ旅行に行くのが趣味だというそうで、そこで手に入れた菓子を持って帰ってきた。その菓子は、どうやら今日だけは特殊な食べ方をするらしい。
「はい、ミケーレ」
 物凄い満面の笑みでクッキーを差し出される。非常に嬉しくない上に気持ちが悪い。これがカミーラなら、とそこまで考えて、途端にミケーレは頭を振った。何を馬鹿なことを考えているんだ。世話になっている白アヒルの女性ならまだしも。――玉砕しているけれど。
 日付は十一月十一日。カレンダーは嘘を言わない。見間違わない限りは。このクッキーは、今日この日だけ限定で、何故か二人一組で食べなければならないらしい。細いクッキーの端と端を互いに口で咥えて食べ進めていく。アジアの島国の菓子が持つ伝統なんだとか。異国の物好きの兄は、目を輝かせて持ってきた。元々甘いものが苦手で、食べると胃痛を引き起こすのに、異国のもの、と聞いただけでこの様子だ。胃痛などどうでもいいのか。頭はいい筈なのに(だって学年首位なのだ)、馬鹿なのではないのかとミケーレは本気で疑っている。それとも頭の病気なのか。不憫だ。
「良いから、こっち咥えろって」
「……もう一度あみだくじでもしたらどうなんだ……」
「そんなにお兄ちゃんとするのが嫌なのか?」
「話を聞く限り、これはどう考えても恋人とかその関係の人間達がやることだろう……!」
「別にいいじゃないか、兄弟なんだから」
「兄弟でもやっていいことと悪いことがあるだろ! っていうか普通に食べれば良いだろ!」
「伝統に則って、敬意を表して食すのが礼儀だろう?」
「じゃあ明日食べろ!」
「今すぐじゃなきゃ嫌だ」
 駄々を捏ねる子供だった。だっておやつまで我慢したんだ。そんなことを言ってむくれている。だったらカミーラと、とも言ったのだが、運命には逆らえない、等と阿呆な事を言って我を通している。こういう所は非常に強情だ。
「まあ、恋人同士がやるなら、ロマンチックな話だけどね……」
「元々はそういう事なのかも知れないな、言ってなかったけど」
「(あの王子……態と言ったのか……?)」
「わたしも食べたいけど、誰かとそうしなくちゃ駄目かしら……」
 カミーラは多分、小分けにされた一袋でも貰って赤い服を着た鼠の女性と白アヒルの女性のところにでも行くのだろうけれど、ミケーレにはどうやら道は残されていないらしい。だったらあの齧歯類の双子とした方がいい、というかあの二匹が食べているところを眺めている方がいい。食べなくてもいい、この際。
「……二人がしてるのなんて、唯の罰ゲームよ」
 呆れたように言ったカミーラが、痛哭極まりないといったように。
 何にもしていないのに何故罰ゲームなんて受けなくてはならないのだと、ミケーレは嘆くしかなかった。
 目の前には、カカオの香り。


2010.11.12. (ドルチェ・ブービートラップ)

マジでマークがあほの子になっていく。
頭いいのにあほな子だと思って書いてたらすごく書きやすかった。視点的にはミケが一番書きやすい。苦労性だから。
普通ミケカミとかマクカミで書いてるんなら、カミたんとポッキーゲームやるのが鉄板なのに何やってるんだ^^
たぶんマークが書きたかった。うちのマクはあほの子です。アラビアンコーストの王子とマクは悪友。

| text | comments(0) |


#2011.04.25 Monday    スポンサーサイト
| - | - |


comment


コメントする