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#2010.11.09 Tuesday    常套句にくちづけを(pumpkins)
 幼少ミケカミマク。
 




 口付けを交わすだとか、結ばれるだとか、そんなことはどうでもいい。子供に色恋沙汰は無縁。もっと夢みるものだ。だが、当人達にとって、夢、などという単語は何処にもない。樅の木の下か、枕元に靴下を置いておけば、あとはお手軽。朝には聖人と妖精がやってきて、靴下は張り裂けそうになり溢れた贈り物が床を転がる。クリスマスとはそういうものだ。と、子供は思っている。
 実質、それが親の口車と努力とで構成されているとは知らず。
「今年のはね、すごいの、わたしが丸ごと入れるくらいの靴下を作ったのよ」
 それは既に靴下ではなくブーツなのではないかと思ったが、マークは口に出さなかった。
「それは靴下じゃない、巨人のブーツだ」
「違うもん! 巨人の靴下よ!」
 横でホットチョコレートをちびちびと啜っていたミケーレが鼻で笑い、カミーラは頬を膨らませる。うん、いつもの光景だ。どうやっても靴下と言い張りたい少女は、巨人が如何に靴下を穿くかを熱弁している最中だ。
 外を見遣ると、曇天の空。鉛がそのまま入ったかのような空だ。空気は冷え冷えとして肌に刺さるし、自分達三人はその下で鼻と頬を赤くしている。今は家で、母が作った温かい飲み物を口にしている。季節は十二月。万聖節は無事に過ぎ、年末の掃除やらと大人が忙しなく動く時期だ。この天気だ、いつ雪が降っても可笑しくない。
「今年もサンタクロースがやってきて、作った靴下をぱんぱんにしてくれるの」
 頬を染めて、まだ来ぬクリスマスを心待ちにしている少女を見れば、親心は和むというものだ。自分と弟はとっくに絡繰りを知ってしまったので、親の楽しみは減ってしまっているのだろう。若しくは、もう無理に夜中に子供部屋に忍び込まなくて済むという安心感を持ったのだろうか。どのみち、夢から醒めてしまった子供にとって、クリスマスは唯、無償で贈り物を貰える一日でしかないのだ。
「だいたい、あんな年老いた人間が一日で世界中の子供にプレゼントを配り終えると思うのか?」
「トナカイさんが凄いのよ」
「あのトナカイは時空を超越出来るのか、宇宙人の差し金か?」
「魔法が使えるのよ!」
 使えるんだもん、とムキになる少女に、弟は冷笑を浴びせる。マークの左鼓膜を甲高く大きな声が突き刺さるが、まあ気にしない。いつもの光景で、いつもの状況だ。格段心を奪われることはないので、ゆっくりとジンジャーティーを喉に通す。
「マークは信じてくれるわよね?」
 くるりと、大きな鳶色の瞳がこちらを向いた。大抵はこのパターンだ。ミケーレに様々な方向から白髭の聖人の存在を論破されたカミーラは、助けを求めるような視線を投げ掛けてくる。
 大抵、自分とミケーレはひとつ、目を合わせて、にこりと微笑むのだ。

「まだまだ子供だな」

2010.10.31 (常套句にくちづけを)

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